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三茶WORKのワーケーション!北海道厚真町視察レポート

3年目に入った三茶WORK。会員数は120名を超え「三茶WORKはなれ」も作り三茶のはたらく場を着々と醸成しています。「仕事の休憩に行けるサウナ欲しいよね」「漫画喫茶みたいなワークスペースもいいよね」と妄想は尽きない。その一方で、

そろそろ三茶を飛び出したい

欲望が一部から湧いて出てるのも事実です。

コロナ禍を経て、働く場所の選択が自由になって移住や二拠点を始めた方も多いのではないでしょうか。

個人事業主が多い三茶WORK内でますます自由になり、実際に移住して退会したメンバーもいました。三茶WORKとしても三茶から遠く離れたところに場所を作って、メンバーが移動しながら働ける場所が作りたい!

何より運営メンバー自身が「たまには三茶出たい」欲がふつふつ出てきてるので「じゃあどこにする?」と未来会議で話すんですがみんな個性強めなので「湖や川とか、水があるところがいい」「やっぱり離島がいい」「歴史ある建造物を受け継ぐとかそういうことしたい」と意見が全くまとまりません。

建築家やデザイナーのメンバーが多い影響もあって「やっぱり場所ありきだよね。土地が見つからないと、なんとも言えないよね」と物件情報をslackで送り合う日々を過ごしていました...

そこで突然、北海道厚真町へこないかと投げかけてきたのが我らが特攻隊長・梶沼さん!
梶沼さんは三茶WORKの立ち上げ・運営メンバーでエンジニア。去年北海道札幌市にUターンされました。(梶沼さんのインタビュー記事はこちら

四人で意気揚々と新千歳空港に降り立ったものの
「あれ?今日って何するんだっけ...」
「梶さんがきっと考えてくれてるよ...」
と半ば不安になりながら待ち合わせ場所に行ってみると
梶さん「え?あー、ノープランです。成田さんにお任せしてみましょう!」
とのことでした。
さすが特攻隊長です。

 

こちらが今回の立役者、成田さん。(写真左から二番目)
2日間私たちに厚真町を案内してくださり、このまちと人の魅力を300%伝えて、どっぷり魅了してくれました!

成田さんは東京大学を卒業後、トヨタ自動車人事部に入社しブラジル駐在を経て退社、故郷の北海道千歳市からほど近い厚真町で2019年5月に起業。地域交通インフラをはじめとしたモノ・ヒト・サービス・エネルギーがひとりひとりに届く世界の創出を目指すマドラー株式会社を経営されています。

自身の事業「MEETS」に加え、誰もが気軽に集まれる場所を作ろうとクラウドファウンディングで資金を募って、厚真町のスクランブル交差点(!)にコミュニティスペース「イチカラ」を作りました。(成田さんに関する素敵なインタビューはこちら

ここがイチカラ。おふとん屋さんの看板は残したんですね。

さて、私たちが今回やってきました厚真町。
一体どこですか?!と思ってる人も多いのではないでしょうか。

厚真町はここ

なんといってもびっくりなのが「三茶からめっちゃ近い」こと。

新千歳空港から車で約30分。羽田空港から新千歳空港までは1時間半、三茶から羽田空港まで私たちは大人っぽくタクシーに乗りましたので20分。合計約3時間で到着!

これは午前中に三茶のティップネスで運動して、eatreat.でランチをし、それから移動しても夕方にはイチカラに到着できる計算になりますね。素晴らしい。

ちなみに、みんながよく知ってる札幌の方が遠いです。
実際に車に乗って移動してみるとその遠さを体感します。何よりどこまでも遠くとおく広がる地平線に「地球ってでっかいんだなあ...」とちっぽけな我が身も実感。

これは梶さんが事前に作ってくれた地図。参考になります↓

この日は日本海側に豪雪が降ってるニュースが流れていましたが、厚真町は太平洋側に位置するため「いうてもそんなに雪降ってないでしょ」と高をくくっていました。
結果、そんなことなかった。

雪すごい

厚真町にこんなに雪がたくさん降ることは珍しいそうです。
積雪50cmくらいはあったんじゃないかな...

たくさんの雪にメンバー一同興奮して、沼に積もった雪の上を歩いてみようか足を出したり、

セイコーマートでダンボールとゴミ袋買ってきて即席ソリを作り、ソリを楽しみました。

 

一面真っ白に雪化粧をした、とってもうつくしい厚真町で、成田さんがたくさんの出会いをくださいました。

厚真町は、2018年9月6日に起きた北海道胆振東部地震の震源地に最も近く、周囲の山々では斜面崩壊が相次いで発生。その土砂に住宅などが押し流されるなどし、37人の方が亡くなりました。この写真は崩壊した斜面にコンクリートが埋め込まれている様子。

まだ地震の爪痕は色濃く残り、復旧に取り組む人たちの心の傷は癒えてないと思います。

かなしい記憶が身近にあることとは裏腹に、厚真町はこのまちの魅力に強く関心を持ち、誰よりも自分自身がその魅力を楽しんでいる人が暮らしを作っている!という印象を受けました。

今回の短い滞在では出会えなかった方もたくさんいると思うのですが、その一部の方で、成田さんが繋いでくれた厚真町の縁や魅力をご紹介します。

 

一次生産と食卓が近いまち

厚真町は農業の盛んなまち。
お米、麦、大豆など基幹作物をメインに、ほうれん草、かぼちゃ、ハスカップなど品目が多岐にわたります。 さらに乳牛、肉牛、豚、鶏など畜産も幅広い。

その良いところは「自分のまちで育てられた食料が、食卓に上がる」こと。
農作物はもちろん、養豚場のすぐそばでトンカツを食べ、養鶏場のすぐそばで卵の乗ったピザを食べることができます。ごはんは「ななつぼし」です。

北海道全体の食料自給率は196%です。
一方、東京都の食料自給率は1%。莫大なエネルギーコストをかけて地球の裏側からやってきた食べ物を「スーパーフード」といって食べるよりも、隣の畑で採れた米で炊いたご飯の方が滋養になるのは間違いありません。

たった2日の間に、羊飼いのおじいちゃんにも会い、これからオープンする放牧牧場の大きな大きな土地も歩きました。まぶしい限りです。

 

聞かれたら「はい」か「yes」で答える明るい行政

「町長にはメッセンジャーで連絡してますよ。厚真の役場は決裁までのスピードが早いし、町民との距離が近いです」と成田さん。そんなことある?!私たちも世田谷区長とtwitterでやりとりしたい!

というわけでやってきました、厚真町役場。

 こちらがまちづくり推進課復興推進グループの小山さん(右)と建設課都市計画グループ主幹の江川さん(左)。

丁寧にまちの地理関係、経済の状況、海と里と山全てがある厚真の良いところ・弱いところを話してくださいました。

厚真町は移住に積極的なまち。東京からのアクセスが良いのもあって、移住希望者もたくさんいるそうです。が、課題になってるのは「住むところ」「開業する場所」不足であるところ。農地が多くを占める影響ですが、そんな中でも古民家を再生しレストランやアトリエとして開業できるフォーラムビレッジや自然の地形そのままに森の中で暮らすルーラルビレッジなどのまちづくりを行なっています。

「すぐには答えられない要望なんかもあるんですが、まあ、白か黒かって聞かれたらなんとかできるようなことを考えたい」と答えることにしてますね」
ニヤリと笑ったお顔が素敵でした。つまり、基本YESで答えて一緒に伴走してくださるんですね。

そんな厚真町役場は半分が地元の方、半分は移住者だそうです。そんな役場、日本全国見渡してもなかなかないんじゃないでしょうか!

 

あるもので手作りし、暮らしを楽しむ本物のクリエイター

成田さんにはおじいちゃん・おばあちゃん友達がたくさんいるそうです。
バレンタインにはおばあちゃん達からチョコレートをもらうし「イチカラ」には日々、コーヒーを飲みながら成田さんとおしゃべりを楽しむおじいちゃん達が集います。

その一人が杉井紀子さん。ルーラルビレッジの丸太づくりの山小屋風のお家に、ご主人と暮らしています。この場所でお二人は「杉井庵」というお蕎麦屋さんを営んでいました。(お店は既に休業)

ご主人がお蕎麦を打ち、紀子さんが作った器でいただくことができるそうです。
紀子さんは陶芸家でもある。地震でご自分で作った穴窯が崩壊してしまったそうですがもう一度作りたいとおっしゃってました。

動物たちとの暮らしを楽しんでいる様子が伝わってきます。

面白かったのが、紀子さんは地域通貨「ルー」を30年以上前から作ってること。いいですねぇ。三茶の地域通貨も作りたい!

紀子さん「成田さんがイチカラを作ってくれたおかげで、厚真のこと、人と人が膝を突き合わせて話し合う場ができた。嬉しい」と笑顔でお話ししてくださいました。

紀子さん、また会いに行きますね!

 

馬とともに暮らしを紡ぎ、馬搬を営む

みなさん、馬搬(ばはん)て聞いたことありますか?馬搬とは、小規模木材搬出作業として伝統的に用いられてきた森林作業です。現在は作業の機械化の進展により衰退しましたが、日本でも岩手県には数少ない馬搬林業家がいます。

馬搬は馬を使って山から伐採された木を運び出します。トラクターが入ると効率的ですが、山を大きく痛めることになる。馬搬はその点、山を傷めず、森を柔らかく耕し、保全に向いています。

厚真町でたった一軒、馬搬林業家を営む西埜さんは北海道恵庭市出身。岩手大学で林学を学び、卒業後は野生動物の生態調査や自然体験施設のスタッフとして従事しました。林業会社を経て、牧場会社にて馬に関わる業務に携わり、2016年度に厚真町のローカルベンチャースクールに参加。2017年に馬搬林業家として独立されました。

西埜さんと現在建築中のおうち。
「施工会社さんに随分お任せしましたよ」と言いつつも、ご自身の手もたくさん加えて作っているお家は完成間近。玄関にお邪魔したら暖炉が燃えていて、家中がとっても暖かかった...!

西埜さんの新居

外には五右衛門風呂

おうちからいつも、馬の様子を観察することができます。
西埜さん家には「カップ」と「ウクル」というばんば馬(みんなが競馬とかで見るお馬さんよりずっとずっと大きく、小さな象くらいの頑丈な体躯です!)と、ポニー「ハスポン」が一頭。それから秋田犬の「玄米」がいます。

雪で反射してあまり写真が撮れてなかったのですが、ウクルと撮った一枚。
馬はとっても人との関係性が強い歴史を持つ動物です。
馬の祖先は5000年前に存在し、その頃は人間にとって狩猟の対象でしたが、3500年前に家畜化されて以降は馬はずっと人と暮らしてきました。もう、野生の馬は存在しないんだそうです。

馬の瞳を見ると、言葉にならない言葉で話しているような不思議な気持ちになり、普段の悩みごとが溶け出していく心地がしますが、西埜さんの眼を見ている時も同じ気持ちになりました。

西埜さんが開業するまで、厚真では馬搬林業の仕事は皆無に等しかったそうです。決して暮らしは簡単ではなく、欲しいものが全て手に入るわけではないけれど、見渡してみたら必要なものは十分に足りていたといった印象を受けました。西埜さんは特に森や自然を愛した子供だったわけでもなく「なんとなく、流れで」生きてきて今に至るそうですが、本当に必要なことがそばにある生き方って、そうやって手に入るのかもしれないですね。

西埜さんの素敵なインタビューはこちら

西埜さんとご家族のドキュメンタリーはこちら

 

次は開拓キャンプで

次々と現れるすごい人物の魅力に圧倒されるうち「これは何がなんでも三茶WORKでなんかしたい!」と妄想が湧いてきました。

厚真町は山も森もありますが、海もある!なんとサーフィンのメッカだそうです。

森の中のふれあい広場みたいなところはキツネや鹿、うさぎもたくさん遊びにきます。
(ヒグマも汗)

野営キャンプ場もある!とにかくキャンプし放題。
次は来年の夏頃、西埜さんや馬のカップ&ウクルたちと森を開拓するところから始める「開拓キャンプ」がしたいねと話しています。開拓キャンプって言うだけで気分が昂揚する...!

なんといっても一同が湧いたのが、現在準備中の放牧牧場・GOOD GOOD MEAT

この場所で、厚真の味を堪能する食のイベントとかしたい...!

今回はお会いできなかったのですが、GOOD GOOD創業者の野々宮さんにも次回はぜひお会いしたいです!

伊藤さんとドローンも飛ばしたい!

 

雪にはまって押したのもいい思い出だね。(全員、電波圏外)

梶さん、素晴らしいおもてなしありがとうございました!

三茶WORKのワーケーションPJTの今後にも乞うご期待です!

 

Photo&Writing by Shizuka Kobayashi (3chawork community manager)