ビール旅インテリア北欧最近は主夫
海外ツアーコンダクター、インテリア業界でのPR担当を経て、ライフワークである世界の共通言語「BEER」を通じて、人と文化とビールが交わる楽しさおいしさを共有すべくフリーランスとして活動中。前職からの企業広報も業務委託として従事。記事:「ビール王国」(ワイン王国)「ビール女子」(ココラブル)「ビールの教科書」(宝島社)「GINZA」(マガジンハウス)「OZ magazine」(スターツ出版)「散歩の達人」(交通新聞社)DHCビールリーフレットほか。
ビール旅インテリア北欧最近は主夫
クラウドファンディングを経て始まった三茶WORK。オープン前の説明会から参加し、当初から会員として利用してくれている1人が、福岡桃子さんです。現在はビールや食のライターとして活動しながらフードイベントの運営やコーディネートにも携わり、照明器具デザインの会社で広報も担当しています。
お話を聞いてみると、三茶に住むことにしたのもフリーランスになったのも、ビールがきっかけだというほどビールが大好き。ご自身を表すキーワードは「旅」と「ビール」と「インテリア」。それらを繋いできたのが「北欧」だったそうです。
「学生の頃から旅と北欧のアンティークやインテリア雑貨が好きで、コレクションや一部販売のために現地へ買い付けに行ったこともありました。初めて海外を一人旅したのは二十歳のときです。5週間、バックパック一つでイギリスを中心にヨーロッパを転々としました。その頃から、もっと海外に行っていろんな人たちとコミュニケーションを取りたいと思っていました」
今でも機会があれば、海外を拠点にしたいと話す福岡さん。大学を卒業後は、(雑貨卸の会社を経て)趣味が高じて海外旅行専門のツアーコンダクターとして就職しました。その仕事のなかで、世界各国の美味しい食べ物や飲み物を知り、ビールにも興味を持ち始めたのだそう。
「案内するからには自分の言葉でお客さんに伝えたいと思って、現地でしか味わえないものは積極的に試すようにしていました。2009年ごろ、当時日本にまだ『クラフトビール』という言葉は一般的ではなくて、いわゆる『地ビール』で知られていた頃です。当時地ビールを好むのはビールマニアの男性陣、年代が上の人が多くて、あまり女性が一人で気軽に飲みに行けるような雰囲気ではありませんでした。そんなとき、日本に輸入されていたデンマークのブルワリー『ミッケラー』のビールに出会ったんです。そのときに飲んだビールはウィスキーのように木樽で熟成させて造られていて、今まで味わったことのない美味しさに驚きました」
のちに会社を辞めてまでビールに携わる仕事がしたいと思うほどの出会い。それは「美味しい」以上の感動があったといいます。
「コペンハーゲンにミッケラーの直営店があるんですけど、それはもうインテリアが美しいんです。まさにスカンジナビアを象徴するようなモダンスタイルで、こんなビールのお店があるんだと思って。ビールにインテリア、そして北欧。私の好きなものがすべて揃って、そこからどっぷりハマってしまいました。ビールはいわゆるマニアやおじさまだけじゃなくて、老若男女いろんな世代が楽しめる飲み物なのかもって。その当時確信しました」
4年ほどツアーコンダクターの仕事を続け、そのあと勤めた照明デザインの会社も業務委託に切り替えてもらい、フリーランスのライターへ。大好きなビアバー「ピガール」の近所に住んで地元民として気軽に通いたいと三茶への引っ越しを決めました。
「飲み物としての味も好きですが、クラフトビールにかかわるすべてのストーリーが好きです。材料となる麦やホップなどを栽培する農家がいて、醸造家がいて、できたビールをお店で提供する人がいて、さらにそれを楽しみに集まる人たちがいる。クラフトビールにはそういうコミュニティやコミュニケーションといった側面もあります。私は基本的に人見知りなので自分の居場所を見つけるのが苦手なのですが、ビールの世界で出会う人たちが面白くて、ここは私の居場所なんだと思えるようになりました」
“いろんな人とコミュニケーションを取りたい”という願いを叶えてくれたビール。さらに住まいの近くでコワーキングスペースを探していた折、三茶WORKができることを知り、コミュニティという部分でも気に入ってくれたそうです。
「コワーキングスペースはずっと探していました。スタバなどのカフェはいつも混んでいるし、永田町のGRIDやLOGDEといった無料で使える場所も利用していたんですが、やっぱりちょっと遠かったんですよね。それで三茶WORKができることを知って、内装ができる前の説明会と、IIDものづくり学校で開かれた『イノベーターズファイル』にも話を聞きに行きました。『三茶で面白いことをしたい』『コワーキングスペースを作りたい』という人たち自身が集まって作っていたから、いいなって。飲食店も入ると聞いたので、あわよくば、ビールの仕入れも相談できたら面白い広がりになるんじゃないかと思いました(笑)」
その思惑通り、現在は三茶WORKで飲むことのできる北欧のクラフトビールをセレクトしてもらっています。「選んだビールのレビューを書くことと、実際にインポートの業者との取引もやらせてもらっています。そういう関わりもできて、私としてはすごくありがたいです。それに、他の会員さんが『ビールはまだありますか?』と尋ねていたり、飲んだことがないものも興味を持って飲んでくれたりするのを見ていて、自分のことのようにすごく嬉しいです」
三茶WORK内でもオリジナルのクラフトビールを作るプロジェクトに参加。「ビールを通じて会員の方と関わりができるのはありがたいですね。フリーランスは孤独になりがちなんですけど(笑)、ここでは『今日は誰とも話さなかった』みたいなことがない。今までずっと一人で仕事していたので、ここに来るといろんな人との出会いがあります。この前参加したランチをしながら英会話する会も楽しかったです」
三茶WORKを利用してみて、他にも気に入ってくれているのがインテリア好きの福岡さんらしい空間のこと。「今日はちょっと木の温もりに触れたいと思ったら、3Fの木のテーブルについてのんびり仕事をしたり、集中したいときは4Fを利用したりと使い分けています」
利用者との交流も楽しみながら、仕事モードのときは2フロアをうまく活用して切り替える。好きなものをシェアしやすく、ほどよい距離感で回っていくコミュニティを気に入っていると話してくれました。
美味しいものを求めては定期的に国内外を旅行しているという福岡さん。ビール以外にも日本酒やワインなどの醸造酒、発酵食品にとても興味があるそうです。旅や食が好きな方、クラフトビールについてもっと知りたい方はぜひ話しかけてみてください。
インタビュー:2020年2月時点
Photography:Tomohiro Mazawa
Interview/Text:Yukari Yamada