山形山形
埼玉県生まれ。名城大学理工学部建築学科卒業。
山形の家具メーカー天童木工でデザイナーとして活動後、2014年春に東北・山形の魅力をものづくりの視点から伝えるプロダクトレーベル「山の形」として活動を始める。
現在は空間・家具の設計を中心に活動の幅を広げ、Maison&Objet 2020にてメトロクスの新ブランドnuscoolから琺瑯の照明「Curl」を発表。三茶ワークでは空間設計・営繕を担当。
山形山形
三茶WORKの魅力の一つは居心地の良さ。
長時間座っていても疲れず、適度にリラックスしながら仕事に集中できると評判です。
そんな空間の設計を担当し、家具デザインを担当した柴山さんは、三茶WORKのすみずみで育つ植物の植物係でもあります。
柴山さんは、どんな生き方を経てこのような心地の良い空間を作る人になったのでしょうか?
名古屋の建築学科で建築を学んでいた柴山さん。もともと抱いていたこれからの建築に対する疑問がぬぐえず「これからは建てる時代じゃない」と、好きだった家具を学ぶため、日本一の家具メーカー「天童木工」に就職。山形に移住しました。
天童木工は「地場産業」。職人さんにも若い人からご年輩の方までいて、そういう環境の中でモノを作っていく。東北という地域自体も、一次産業が身近で、「暮らしが仕事に直結している感じが自分に合っていました」
そんな中、山形にせっかく住んでいるのだから「さくらんぼだ!」と思い立ち、探し当てたさくらんぼ農家を訪ねて、手伝いたいと直談判。明け方には果樹農家を手伝い、それから出社する生活に自然となっていきました。
「そうすることで「山形の一部になっている」という実感がわいたし、地元の人との距離も近くなったように感じました」
山形に住んで6年目の頃、ツーリズムやローカリズムというキーワードが盛んになり、まちのマップをつくったり、天童木工で椅子を作るツアーを作ったりしているうち、山形の魅力をものづくりの立場から伝えたいと想うようになった柴山さん。
そして生まれたのが、今も続けているプロダクトブランド「山の形」。山形を離れても、山形と関わり合いを続けながらできる仕事となりました。
一昨年の冬から関わった三茶WORKは、「これは初めて、自分がクライアントになる」仕事ということもあって、チャレンジもたくさんできたし、自由度の高い仕事になったそうです。
「それほど広い空間ではないので、設計自体はすぐに終わったけれど、制作している段階でみんなとディテールを作っていくことにたくさんの時間をかけました」
特に3Fはお茶というキーワードを軸に、新しく加わるメンバーと話しながら、色選び、質感の作り方などすみずみまでこだわっていきました。
「その結果、オープン直前になって最後はみんなでDIYを毎週末やることになりましたが、その手作業の分だけ愛着がわく空間に仕上がった」と言います。
そして、完璧に作り上げずに、余白を残すというのもポイントでした。
凹みだけ作っておけば、オープン後に使っている人がそこに新たなものを置いたり、空間が変化していくことを楽しんでいく場を作る楽しさというのは柴山さんならではの発想。
一般の案件では、竣工と同時に自分の手を離れていってしまうけど、三茶WORKは関わりながらアップデートしていけるところがご自身にとっても魅力だそうです。
photography: Shuhei Shibayama
こちらの写真は、1月にパリで開催されたインテリアとデザインの見本市Maison&Objet2020にて、メトロクスの新ブランドnuscoolから柴山さんが発表された琺瑯の照明。
活躍の幅が世界へ広がる柴山さんですが、足元はこれからも三茶や世田谷のまちに置いていたいとのこと。
これからはどんなことにチャレンジしたいですか?
「これからも、この三茶ワークカンパニーの仲間たちと一緒に、クライアントワークではない仕事をどれくらい作れるかということにチャレンジしたいです」
コワーキングを増やすというより、サウナとか、このまちに必要とされる場所やものを自由度高く、作っていきたいとのこと。またこのまちに新しい空間が生まれる日が楽しみですね。
インタビュー:2019年12月時点
Interview : Viola Kimura
Text : Shizuka Kobayashi
Photography : Tomohiro Mazawa